2012年12月12日水曜日

No Fun

 今朝、通勤電車にお相撲さんが乗っていた。浴衣姿でこんな寒い日でも暑そうだった。満員電車の中でのお相撲さんはかなりシュールな存在で、朝から夢の世界へ舞い戻った感覚だったぜ。
 小島信夫の『抱擁家族』を読んでいる。この作品も素晴らしい不条理な作品だが、淡々とそして飄々とした語り口、文体がこの作品の背景となっている戦後の日本という国の持つ捩れや複雑さを新しい棚に上げ、浮き上がらせている。私達はその新しさ、鋭さにぞっとし深刻に考え込んでしまうのだが。それはFranz Kafkaの『城』を読んだ時に感じた感覚に似ている。寓話でありながら、どんなモノよりも「社会」がリアルに表現されていて。そのどうにもならなさ、制度や組織などの核心に何時までも辿り着けない絶望感はこれがまさか「文学」かと思わされる程のモノだった。素晴らしい作品はいつも、自分の中に作り上げた安易な枠に、安心し、胡坐をかいている自分に対して恐怖を与え怯えさせてくれる意味で素晴らしいのだと思う。

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